AI分野の問題 その2
皆さん、こんにちは。LP開発グループのn-ozawanです。
19世紀にオーストラリアに持ち込まれたラクダが野生化し、現在では数十万から100万頭となり、水を求めて水道管やエアコンの室外機を破壊する事象が起きています。
本題です。
昨今、AI技術の進化は著しいものがありますが、まだまだAI分野に関する議論は尽きません。AIが人間のように考え、意思を持ち、振舞うことはできるのか?どうやってそれを判定するのか?今回はチューリングテスト、強いAIと弱いAIのお話です。
目次
AI分野の問題
チューリングテスト
私たちは「人工知能」と聞くと、アトムやドラえもんのような、まるで人間かのように振舞う機械を想像します。しかし、前回で取り上げた通り、人間のように振舞うAIを開発することは現実的に難しいです。仮に、開発に成功した場合、そのAIが人間のようであると、どうやってテストするのでしょうか。
チューリングテストは、イギリスの数学者アラン・チューリングによって提案された、機械が人間のように振舞えるのかどうかを判定するためのテストです。テストでは、審査員が人間とAIの両方と会話し、どちらが人間かを判別できなければ、そのAIは「人間らしく振舞えた」と判定されます。

重要なのは、チューリングテストはあくまで「人間らしさ」を測るテストであり、人間並みの知能を有しているのかどうかをテストするものではない、と言うことです。例えば、複雑で高度な問題を数秒で解いてしまった場合、それは人間らしくなく、不合格となります。
また、「エライザ効果」という問題もあります。エライザ効果とは、単純な受け答えしかできないAIであっても、人間はその応答に知性や感情を感じ取ってしまう心理現象です。エライザ効果のため、チューリングテストの審査員は、AIの本質的な理解や知能を正しく評価できず、表面的な会話能力だけで「人間らしさ」を判断してしまうことがあります。

このように、チューリングテストはAIの知能や理解力そのものを測るものではなく、人間を納得させる「ふるまい」ができるかどうかを評価するに過ぎません。そのため、AIが本当に人間のように「考えている」のか、それとも巧妙に人間らしく「見せかけている」だけなのかを区別することが難しい、という問題点があります。
弱いAIと強いAI
「強いAI」と「弱いAI」は、AIの目指すゴールや能力の違いを示す用語です。AIが人間並みの推論や問題解決能力を持つことができるのかどうかの論争で用いられます。
強いAI(Strong AI)
強いAIは、人間と同等の知能や意識、理解力を持つAIを指します。強いAIが実現すれば、AIは単なる情報処理や記号操作を超えて、自意識を持ち、本当に「理解」し「考える」存在となります。この概念を提唱したジョン・サールは「正しくプログラムされたコンピュータには、人間に似た心、精神を持つ」と述べました。一方でジョン・サールは「中国語の部屋」という思考実験にて、強いAIは実現不可能であると主張しました。
この「中国語の部屋」では、中国語を全く理解できない人を、部屋の中に閉じ込め、中国語の質問文とマニュアル(応答手順書)だけを渡します。中の人はマニュアル通りに記号操作を行い、外部からの中国語の質問に対して適切な中国語で返答します。外から見ると、部屋の中の人は中国語を理解しているように見えますが、実際には意味を理解せずに単に記号を操作しているだけです。

この思考実験を通じてサールは、「計算やシンボル操作だけでは本当の意味の理解や意識は生まれない」と主張しました。つまり、AIがどれだけ人間らしい応答を返しても、それが本当に「理解」しているとは限らない、という問題を指摘しています。これは、チューリングテストでAIが人間らしく振る舞えたとしても、その内側で「理解」や「意識」が伴っているかどうかは別問題である、という議論と深く関係しています。

弱いAI(Weak AI)
弱いAIは、特定のタスクや目的に特化したAIです。弱いAIは、与えられた問題を効率的に解決できますが、人間のような意識や汎用的な知能は持ちません。強いAIの実現は非常に困難であり、仮に実現したとしても実用性が低いことから、弱いAIで十分であるという考えもあります。現在実用化されているAIのほとんどは弱いAIです。
おわりに
「AI効果」という言葉があります。AI効果とは、その仕組みやロジックが明らかになると、それは「知能」ではなく、単なるプログラムだと考えてしまう心理現象です。探索も、かつてはAIとしてもてはやされましたが、今では単なるアルゴリズムの一つと見なされています。
OpenAIのGPT-4.5がチューリングテストに合格したと、カリフォルニア大学の研究チームが発表しました。昨今のAI技術の進化は目を見張るものがありますが、いずれはAIと呼ばれなくなる日が来るのでしょうか。
ではまた。